自動車業界がやばい

部品メーカー×倒産の可能性

大豊工業の決算と倒産リスクを徹底分析|財務体質と今後の課題

大豊工業株式会社は、自動車エンジン部品や産業機械用部品を製造するトヨタグループ系の重要サプライヤーです。

特にエンジン用軸受(メタルベアリング)分野において世界トップクラスの技術力を持ち、グローバルに展開しています。本社は愛知県豊田市にあります。

この記事の執筆者(本田)

自動車業界で働いて20年。様々な工場に出入りしてきました。

この20年間で、大企業から零細企業まで仕事を通じて見てきましたが、中には倒産や廃業してしまった会社も残念ながら多くあります。

昨今の自動車業界の大変革により、厳しさが増している業界の情報を発信していますので、自動車業界に従事している方は、ぜひ、お役立てください。

大豊工業の主な製品

製品カテゴリ 具体的製品
エンジン用部品 エンジンベアリング、カムシャフト、ロッカーアーム
産業機械部品 コンプレッサー用ベアリング
自動車シャシー部品 ブッシュ、リンク系部品
環境関連製品 排ガス浄化装置関連部材

大豊工業の主な納入先

納入先企業 主な用途
トヨタ自動車 エンジンベアリング、シャシー部品
ホンダ、日産、マツダ エンジン用部品各種
建設機械メーカー(コマツなど) 産業用ベアリング

大豊工業の決算分析(倒産リスク)

大豊工業の2024年3月期の決算状況は以下の通りです。

指標 数値
売上高 約1,200億円(前年比+4.2%)
営業利益 約55億円(前年比+3.5%)
自己資本比率 約58%
現金及び預金残高 約180億円

倒産リスクについて

自己資本比率が50%以上あり、現金も十分に確保されているため、短期的な倒産リスクは低いと考えられます。ただし、主力製品がエンジン系部品であり、EV化による影響を強く受けるため、中長期的な事業ポートフォリオの見直しが重要な課題となっています。

大豊工業の給与水準

項目 金額
平均年収 約620万円(2024年時点)
初任給(学部卒) 22.3万円
初任給(院卒) 24.0万円

愛知県内の製造業としては標準的な水準です。トヨタグループ系のため福利厚生は安定しており、賞与も年2回しっかり支給されています。

大豊工業の将来性:EV時代における挑戦と展望

主力製品と電動化への対応

大豊工業は、トヨタグループの一員として、エンジン用すべり軸受やガスケットなどの内燃機関向け部品を主力としています。しかし、世界的なEV(電気自動車)シフトにより、これらの製品の需要は減少傾向にあります。

この変化に対応するため、同社は「VISION2025」を策定し、既存技術の深化と新たな価値の探索を進めています。特に、モーターコイル冷却部品やインバーターケース、燃料電池車向けのセパレーターなど、電動化対応製品の開発に注力しています。

業績と課題

2025年3月期の連結決算では、売上高は1,127.8億円と前期比で微増となりましたが、営業利益は6.1億円と大幅に減少し、最終損益は41.8億円の赤字となりました。

この赤字の主な要因は、中国市場での減産やダイカスト新製品立ち上げ時の生産ロスなどが挙げられます。

今後の展望

2026年3月期には、売上高1,170億円、営業利益21億円、経常利益23億円、最終利益11億円と、黒字転換を見込んでいます。

また、同社は「深化・探索別組織」への移行を進め、既存製品の競争力強化と新製品の開発を両立させる体制を整えています。

大豊工業は、内燃機関向け部品から電動化対応製品への転換を図りつつありますが、現時点では業績に課題が残っています。今後、電動化製品の開発と収益化が進むかどうかが、同社の将来性を左右する重要なポイントとなるでしょう。

トランプ関税の影響

米国市場向けに間接的に供給している製品もあり、トランプ政権時代には影響がありました。

具体的影響と対応

  • 米国向け自動車部品に関税が課され、コストアップ
  • 北米拠点(メキシコ工場など)の活用による影響緩和
  • 為替リスク(円高リスク)への耐性強化

影響は完全には回避できなかったものの、グローバルな生産体制でリスクヘッジを行っています。

大豊工業に関する口コミ・評判

社員口コミ

  • 「安定した経営基盤があり、安心して働ける」
  • 「技術開発には積極的で、新しい挑戦もできる」
  • 「年功序列気味だが、成果評価制度も少しずつ進んでいる」
  • 「EV化への対応スピードに不安を感じる社員もいる」

取引先口コミ

  • 「製品品質が非常に安定している」
  • 「納期管理が徹底されており信頼できる」
  • 「コスト競争力向上へのさらなる努力が必要」

まとめ

大豊工業は、エンジン部品分野で世界的な存在感を持つ一方、EV時代への構造転換が急務となっています。財務体質は安定しており、短期的なリスクは小さいですが、今後は新領域へのシフトスピードが企業の未来を左右する重要な要素となるでしょう。

■おすすめ記事■