近年、国内自動車メーカーの中でもEV(電気自動車)への転換が急速に進む中、グループ会社の再編や生産体制の見直しが注目されています。
そんな中、日産自動車グループの中核製造会社である「日産車体株式会社」は、商用車や特装車両の製造を担い、国内外で安定した供給を続けてきた実績ある企業です。
本記事では、日産車体の会社概要や直近の決算状況、給与水準、EVシフトに対する将来性、さらにトランプ関税の影響や社員の口コミまで、幅広く掘り下げてご紹介します。安定性と課題を併せ持つ同社の“今”を把握することで、自動車業界全体の変化にもつながる視点を得ることができるはずです。
この記事の執筆者(本田)
自動車業界で働いて20年。様々な工場に出入りしてきました。
この20年間で、大企業から零細企業まで仕事を通じて見てきましたが、中には倒産や廃業してしまった会社も残念ながら多くあります。
昨今の自動車業界の大変革により、厳しさが増している業界の情報を発信していますので、自動車業界に従事している方は、ぜひ、お役立てください。
日産車体株式会社とは
会社概要
日産車体株式会社(Nissan Shatai Co., Ltd.)は、神奈川県平塚市に本社を構える日産自動車グループの車両製造会社です。1949年設立以来、日産ブランドを支える完成車メーカーとして事業展開しています。
本社所在地 | 神奈川県平塚市堤町2番1号 |
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設立年 | 1949年 |
主な製品 | キャラバン、NV200バネット、パトロールなどの商用車・特装車両 |
主要納入先 | 日産自動車、三菱ふそう、官公庁(特装車) |
決算分析と倒産リスク
直近の業績
年度 | 売上高(億円) | 営業利益(億円) | 純利益(億円) |
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2021年度 | 3,017 | 44 | 29 |
2022年度 | 3,084 | ▲5 | ▲28 |
2023年度 | 3,300(予想) | 黒字回復傾向 | 非公表 |
2022年度は原材料高騰や供給制約の影響で赤字決算となりましたが、2023年度は黒字回復の見通しが立っています。親会社である日産自動車の支援も厚く、現時点で倒産リスクは低いと見られています。
日産車体の湘南工場が閉鎖?
日産車体の湘南工場(神奈川県平塚市)は、日産グループにおける重要な完成車生産拠点の一つであり、特にミニバンや商用車などの生産を長年にわたって担ってきました。1946年に操業を開始し、70年以上にわたって稼働してきた歴史ある工場です。
湘南工場では、かつて「キャラバン」「NV350」「エルグランド」などの人気車種が生産されており、ピーク時には数千人規模の従業員が働いていました。地元経済への貢献も大きく、地域社会と密接な関係を築いてきた工場でもあります。
しかし、EV(電気自動車)シフトの進展や、日産自動車本体の生産体制の再編、コスト削減の方針により、湘南工場の稼働継続が見直されることとなりました。
この閉鎖により、地域経済や協力会社への影響が懸念されており、雇用維持や跡地の活用策が今後の焦点となっています。また、日産車体の他工場との再配置や、従業員の再雇用・配置転換なども含め、グループ全体での対応が求められています。
湘南工場の閉鎖は、日産グループの構造改革とEV時代への移行を象徴する大きな転換点となっています。
給与水準と初任給
平均給与・待遇
平均年収 | 約590万円(2023年時点) |
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初任給(大卒) | 月給220,000円〜230,000円程度 |
賞与 | 年2回(6月・12月) |
日産自動車本体よりはやや控えめな水準ですが、安定した収入と福利厚生が整っています。
将来性:EV時代の中での立ち位置
EV化への対応
- 商用EV車の製造も検討中
- 既存設備のEVライン対応への改修余地あり
- 親会社である日産のEV戦略に大きく依存
今後、軽商用EVやバンタイプEVなどへの生産対応が求められる中、早期の技術導入・再編がカギとなります。
トランプ関税の影響
過去および今後の動向
- 完成車の輸出割合は限定的なため、直接的影響は限定的
- ただし部品の米国調達比率が高いため、間接的コスト上昇の可能性あり
- 日産グループ全体のコスト戦略に影響を与える懸念
口コミ・評判
社員の声(ポジティブ)
- 「有休が取りやすく、ワークライフバランスは良好」
- 「組合が強く、雇用が守られている安心感がある」
社員の声(ネガティブ)
- 「年功序列が根強く、若手が評価されづらい」
- 「親会社依存が強く、独自性に欠ける部分もある」
まとめ
日産車体は、日産自動車の製造子会社として重要な役割を担っています。短期的には赤字リスクやEV対応の遅れなどの課題もありますが、安定した親会社の支援とインフラを背景に、長期的には再成長も期待できるポテンシャルを秘めています。今後のEVシフトへの本格的対応と、独自技術の強化がカギとなるでしょう。