ベアリングや等速ジョイントといった自動車の基幹部品を手がけるNTN株式会社は、100年以上の歴史を持つ日本を代表する機械部品メーカーです。
自動車業界がEV化という大きな変革期を迎えるなか、NTNもまたその対応を迫られています。直近の決算では赤字転落が報じられるなど、一部では経営の先行きに不安の声も上がっていますが、同社はグローバルな供給網と高い技術力を背景に巻き返しを図っています。
本記事では、NTNの企業概要から業績分析、給与水準、EV時代の展望、トランプ関税の影響、そして社員の口コミまで、多角的に深掘りしてご紹介します。
この記事の執筆者(本田)
自動車業界で働いて20年。様々な工場に出入りしてきました。
この20年間で、大企業から零細企業まで仕事を通じて見てきましたが、中には倒産や廃業してしまった会社も残念ながら多くあります。
昨今の自動車業界の大変革により、厳しさが増している業界の情報を発信していますので、自動車業界に従事している方は、ぜひ、お役立てください。
- NTNの最新ニュース
- 🆕 新商品・技術開発
- 🤝 企業提携・環境取り組み
- 🎥 広報・イベント活動
- NTN 会社概要
- 決算分析と倒産リスク
- 給与水準と初任給
- 将来性(EV時代への対応)
- トランプ関税の影響
- 👍 良い口コミ
- 👎 悪い口コミ
- まとめ
NTNの最新ニュース
2025年3月期 通期決算発表(5月16日)
2025年3月期の連結決算説明会資料を公開。営業外損失および特別損失を計上し、通期業績予想との乖離に関する情報も開示されました。
法定準備金の減少に関する通知(5月14日)
利益準備金の額を減少する旨を開示し、株主資本政策の一環として説明しています 。
🆕 新商品・技術開発
e‑Axle向け「樹脂モールド絶縁軸受」が量産開始(5月21日)
電動車用e‑Axle向けに、新開発絶縁軸受の量産を開始し、EV用途に対応しています 。
高負荷対応「HA‑C軸受」の自動車向け提案開始(5月15日)
特殊熱処理技術によって高負荷容量を実現した「HA‑C軸受」を、乗用車向けに提案開始 。
新型流体動圧軸受を開発(2月18日)
正逆両方向回転が可能な流体動圧軸受を開発。静粛性・省エネ性能に優れ、小型モーター等への展開を目指します 。
🤝 企業提携・環境取り組み
LTM社への資本参加(5月21日)
ドイツ・LTM社に資本参加し、欧州での供給体制強化や環境技術分野の協業を進めます 。
バーチャルPPA契約締結(5月12日)
コスモエコパワーの中紀ウィンドファームを活用した初のバーチャルPPA(電力購入契約)を締結し、再エネ導入を加速 。
🎥 広報・イベント活動
ベアリング製造プロセスをYouTubeで公開(4月9日)
製造工程の詳細を紹介した動画を公開。ベアリングの歴史や低摩擦技術をわかりやすく伝え、広報強化を図ります 。
SUPER GT「BRZ GT300」へ軸受提供(4月3日)
スバル STI のSUPER GT参戦車両「BRZ GT300」に円すいころ軸受を提供し、レース支援によって高負荷耐性を譲渡 。
ツアー・オブ・ジャパンで「NTN回る学校」開催(5月7日)
国際自転車ロードレースにて、子ども向けにベアリング体験教室「NTN回る学校」を全国8ステージで開催 。
「KISSsoft」向け設計データ提供開始(5月30日)
ギヤボックス解析ソフト「KISSsoft」にベアリング設計データを提供し、CAD/CAE分野での連携強化 。
NTN 会社概要
基本情報
社名 | NTN株式会社(NTN Corporation) |
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創業 | 1918年3月 |
本社所在地 | 大阪市北区中之島3丁目6番32号 ダイビル本館 |
資本金 | 543億円 |
従業員数 | 5,572名(連結:22,617名)※2024年3月末現在 |
売上高 | 8,363億円(2024年3月期連結) |
事業内容 | 軸受、ドライブシャフト、精密機器商品の製造および販売 |
出典:NTN公式サイト
主な製品と納入先
NTNは、以下のような製品を製造・販売しており、主要な自動車メーカーや産業機械メーカーに納入しています。
- ベアリング(軸受)
- 等速ジョイント(CVJ)
- 精密機器商品
主な納入先には、トヨタ自動車、日産自動車、本田技研工業、スズキ、マツダ、いすゞ自動車、SUBARUなどがあります。
決算分析と倒産リスク
2024年度の業績
NTNは2024年度において、売上高8,363億円を計上しましたが、最終赤字を計上しました。これは、販売減や国内外での事業再編の加速に伴う特別損失の増加が主な要因とされています。
倒産リスクの評価
NTNは、長年にわたり安定した経営を続けており、倒産リスクは低いと考えられます。ただし、EVシフトの加速や原材料価格の高騰、為替変動など、事業環境の変化には注意が必要です。
給与水準と初任給
初任給(2025年4月実績)
学歴 | 初任給(月額) |
---|---|
高専卒 | 217,600円 |
学部卒 | 248,400円 |
修士了 | 278,600円 |
平均年収
NTNの平均年収は約699万円であり、国税庁が発表している2022年分の給与所得者の平均給与(458万円)と比較すると高い水準にあります。
将来性(EV時代への対応)
EV向け製品の開発
NTNは、EV・HEV向けの新製品として、同軸e-Axle行星減速機用のローラーベアリングユニットを開発しました。この製品は、高速性や耐久性に優れ、EVの小型化・高速化に貢献します。
出典:NTN推出面向EV·HEV的创新同轴e-Axle行星减速机滚针轴承单元
市場展望
アジア太平洋地域のEVベアリング市場は、今後も成長が期待されており、NTNはこの分野でのシェア拡大を目指しています。
出典:Asia-Pacific Electric Vehicle Bearings Market Forecast to 2034
トランプ関税の影響
関税政策の影響
2025年4月、トランプ前大統領は、日本からの輸入自動車に対して24%の関税を課す方針を示しました。これにより、NTNの米国向け輸出にも影響が及ぶ可能性があります。
出典:あまりに愚かなトランプ関税「損をするのは米国民」のワケ
👍 良い口コミ
安定感と落ち着いた社風
「低位安定した企業で、ギスギス感や昇格競争が少なく穏やかな雰囲気」「倒産の心配がない」との評価があり、安心して長く働ける環境がある 。
ワークライフバランスと休暇制度
「有給休暇はほぼ100%取得可能」「フレックスや在宅勤務も使いやすい」「育児や介護休暇など多様な制度が整っている」といった声が多数 。
福利厚生・住宅支援
住宅補助や寮制度があり、駐車場・社員食堂などの設備も整っていて「福利厚生が充実している」との口コミがあります 。
法令順守とホワイト企業傾向
台風や地震など緊急時に帰宅指示を出す、サービス残業が管理されているなど、「ホワイト企業だと思う」「法令遵守の傾向が強い」というコメントもあります 。
👎 悪い口コミ
仕事のやりがい・成長機会に乏しい
「仕事への熱意が高い人は辞める傾向」「働きがいがあまりない」「挑戦的な社風ではない」との意見が複数あり 。
業務負荷と評価制度への不満
製造や技術職では業務負荷が高く、給料に反映されず不満との声。「残業が少ないと給料が減る」「評価制度が不透明」という課題も報告されています 。
経営の方向性・ビジョンの不明瞭さ
「成長ビジョンがない」「重要判断の決定プロセスが曖昧で先送り傾向」「基幹システムなどが数十年更新されていない」といった懸念が示されています 。
まとめ
NTN株式会社は、長年にわたり高品質なベアリングを提供してきた企業であり、EV時代への対応にも積極的に取り組んでいます。2024年度は赤字決算となりましたが、EV向け製品の開発や市場展開により、将来的な成長が期待されます。給与水準や福利厚生も充実しており、安定した職場環境が整っています。