自動車業界が大きな転換期を迎える中、日産系の主要サプライヤーとして注目されているのがファルテック株式会社です。
金属や樹脂を用いた外装部品の製造に強みを持ち、国内外の自動車メーカーへ安定供給を続けています。とくにEV化の波を受けて軽量・高機能な部品の需要が高まる中で、同社がどのような戦略を描いているのかが注目されています。
本記事では、ファルテックの企業概要、財務状況、給与体系、EV時代への展望、米中貿易摩擦の影響、さらには社員口コミまでを網羅的に分析し、転職や就職を検討する方にとって有益な情報を提供します。
この記事の執筆者(本田)
自動車業界で働いて20年。様々な工場に出入りしてきました。
この20年間で、大企業から零細企業まで仕事を通じて見てきましたが、中には倒産や廃業してしまった会社も残念ながら多くあります。
昨今の自動車業界の大変革により、厳しさが増している業界の情報を発信していますので、自動車業界に従事している方は、ぜひ、お役立てください。
ファルテック株式会社の企業分析
会社概要:日産系サプライヤーとしての強み
ファルテック株式会社は、TPR株式会社の連結子会社として、自動車メーカー向けに樹脂外装部品、モールディング、ルーフレール、電装品、純正用品などの設計開発・生産・販売を行っています。特に日産自動車との取引が多く、日産系サプライヤーとしての地位を確立しています。また、国内外に生産拠点を持ち、グローバルな供給体制を構築しています。
主な製品と納入先
ファルテックの主力製品と主要納入先は以下の通りです。
製品カテゴリ | 主な製品 | 主な納入先 |
---|---|---|
自動車外装部品 | 樹脂外装部品、金属モールディング部品 | 日産自動車、トヨタ自動車、ホンダ、マツダ、スズキ、ダイハツ工業など |
自動車純正用品 | エアロパーツ、電装品 | 上記自動車メーカーおよび販売会社 |
自動車関連機器 | 検査・整備用機器、製造用設備・機器 | 自動車メーカー、整備会社 |
決算分析:安定した財務基盤と成長戦略
2024年3月期の業績
ファルテックの2024年3月期の連結売上高は約818億円で、前期比で増収となりました。営業利益や純利益も堅調に推移しており、財務基盤は安定しています。また、2026年度までの中期経営計画では、売上高800億円の達成を目指し、生産体制の再編や新製品の開発を進めています。
倒産リスクの評価
倒産確率Webによると、ファルテックの1年以内の倒産確率は0.10%、3年以内で0.30%、5年以内で0.50%、10年以内で1.00%と、リスクは低い水準にあります。また、自己資本比率が高く、流動比率も良好であることから、短期的な倒産リスクは低いと考えられます。
給与水準と初任給
平均年収と初任給
ファルテックの平均年収は約575万円で、業界平均と同程度です。初任給は以下の通りです。
学歴 | 初任給(月額) |
---|---|
大学卒 | 230,900円 |
大学院卒 | 239,500円 |
専門卒(2年制) | 217,050円 |
賞与は年2回支給され、昇給は年1回行われます。また、平均勤続年数は17.4年と長く、離職率も低い傾向にあります。
給与制度の特徴
給与制度は年功序列型で、昇給ペースは緩やかです。若手社員の給与は低めで、残業代によって補われる傾向があります。評価制度については、目標設定が高く、評価が厳しいとの声もあります。
将来性:EV市場への対応
EV向け製品の開発
ファルテックは、EV車向けの新製品開発と拡販を推進しています。EVの普及に伴い、軽量化やデザイン性が求められる中、同社の樹脂外装部品や電装品の技術は重要性を増しています。また、EV用モーター評価設備を設置し、EV市場への対応を強化しています。
海外展開と生産体制の再編
ファルテックは、国内外の生産拠点を再編し、生産効率の向上を図っています。具体的には、国内工場のめっきラインを集約し、中国・湖北省に金属系部品を生産する工場を新設しています。これにより、生産能力や生産効率を改善し、収益体質の強化を目指しています。
トランプ関税の影響
関税政策による影響
米国の関税政策により、日本企業全体で業績への影響が懸念されています。ファルテックも北米市場での事業展開において、関税の影響を受ける可能性があります。特に、鉄鋼やアルミニウム製品に対する関税引き上げは、原材料コストの上昇を招く可能性があります。
対応策
ファルテックは、米国での生産自動化や中国への生産移管を進めることで、関税リスクの軽減を図っています。また、サプライチェーンの多様化や現地調達の推進により、リスク分散を進めています。
口コミと評判
社員の声
社員の口コミから、以下のような評価が見られます。
- 給与水準:平均年収は約575万円で、業界平均と同程度。
- 勤務時間:部署によって差があり、残業が多い部署も存在。
- 職場環境:フリーアドレス制により、個人スペースが狭く、業務効率に影響があるとの指摘。
- 福利厚生:在宅勤務は週に2回まで可能。住宅補助は転勤を伴う場合にのみ支給。
- 評価制度:年功序列型で、昇進や昇給のペースが遅いとの指摘。
総合評価
ファルテックは、安定した財務基盤と堅実な経営を行っており、将来性も期待できます。給与水準や評価制度には改善の余地がありますが、働きやすい職場環境が整っている点は魅力です。今後のEV市場への対応やグローバル展開に注目が集まります。