自動車業界がやばい

部品メーカー×倒産の可能性

サーテックカリヤがファンド会社に買収された?背景を考察してみた

日本のものづくりを支える中堅製造業の再編が進む中、注目を集めているのが2025年5月に発表された「サーテックカリヤ」と「セレンディップ・ホールディングス」の資本提携です。

EV市場の拡大や事業承継の課題を背景に、老舗表面処理メーカーと成長支援を専門とする投資会社が手を組んだ今回の動きは、単なるM&Aにとどまらず、地域産業の再活性化やグローバル展開の布石と見ることもできます。本記事では、両社の概要と提携の背景、今後の展望について詳しく解説していきます。

この記事の執筆者(本田)

自動車業界で働いて20年。様々な工場に出入りしてきました。

この20年間で、大企業から零細企業まで仕事を通じて見てきましたが、中には倒産や廃業してしまった会社も残念ながら多くあります。

昨今の自動車業界の大変革により、厳しさが増している業界の情報を発信していますので、自動車業界に従事している方は、ぜひ、お役立てください。

 

サーテックカリヤとは

愛知県刈谷市に本社を構える株式会社サーテックカリヤは、1950年創業の老舗表面処理メーカーです。自動車部品向けを中心に、国内外の大手メーカーへめっき加工サービスを提供しています。

会社概要

項目 内容
設立 1950年
事業内容 めっき・表面処理加工
主要取引先 デンソー、豊田自動織機、アイシンなど
海外拠点 タイ、インドネシア、フィリピン、ベトナム、メキシコ ほか

サーテックカリヤの将来性は?EVシフトでどう変わるか徹底考察 - 自動車業界がやばい

同社の強みは、高い品質基準を満たす生産体制と、トヨタ系サプライヤーとしての豊富な実績にあります。トヨタ生産方式(TPS)を導入し、無駄の排除・品質安定化・納期遵守において信頼性が高く、一次・二次部品メーカーからのリピート発注が安定的に続いています。

さらに、環境対応にも積極的で、RoHSやELV指令などの欧州規制への適合、クロムフリー技術の導入など、環境と調和した処理技術を早期に取り入れており、大手完成車メーカーの要求に応える体制を整えています。

総じて、サーテックカリヤは表面処理業界において「技術力・信頼性・環境対応力」の3点で高い水準にあり、特に自動車部品業界での表面処理パートナーとしての存在感は大きいと言えます。ローカル企業ながら、品質と実績で築いた地位は揺るぎなく、表面処理分野の中堅有力企業の一角を占めています。

セレンディップ・ホールディングスとは

セレンディップ・ホールディングス株式会社は、名古屋市に本社を構えるM&A・経営支援の専門企業です。中堅・中小の製造業を中心に、「100年企業の創出」「経営の近代化」を掲げ、グループ会社化を進めています。

会社概要

項目 内容
設立 2006年
主な事業 事業承継支援、M&A、経営支援
上場市場 東証グロース(証券コード:7318)
グループ企業 天竜精機、佐藤工業、三井屋工業 など

セレンディップ・ホールディングス株式会社は、表面処理業界において、サーテックカリヤ以外にも関連企業への投資を行っています。具体的には、2023年に白金鍍金工業株式会社への投資を実施し、現在も投資を継続中です。白金鍍金工業は、めっき加工を中心とした表面処理業を手掛けており、セレンディップの「ものづくりファンド」を通じた投資先の一つです。

また、セレンディップは、表面処理業界に限らず、製造業全般において多数の企業への投資を行っています。例えば、2018年にはサンテクト株式会社(現 セレンディップ・テクノロジー株式会社)を子会社化し、2024年にはエクセル・グループを完全子会社化するなど、積極的なM&A戦略を展開しています。

これらの投資は、セレンディップの中期経営計画「セレンディップ・チャレンジ500」の一環として、非連続的な成長を実現するための「事業承継M&A」や「海外進出」、「脱炭素化・EV化」、「フューチャー・ファクトリー」の推進を目的としています。

したがって、セレンディップは、サーテックカリヤ以外にも表面処理業界や製造業全般において、複数の企業への投資を行っており、今後もさらなるM&Aを通じて事業拡大を図る可能性があります。

 

提携の背景と目的

1. 事業承継と経営の近代化

サーテックカリヤは技術力の高い企業ながら、創業70年以上を経て後継者問題や経営強化が課題となっていました。セレンディップは中堅企業の「第2創業」を支援する立場から、グループ参画による経営基盤の安定化を狙っています。

2. EV市場への対応強化

サーテックカリヤは、EV(電気自動車)向けのバスバーやインバーターなどに対応する表面処理技術を保有しています。今後拡大が見込まれるEV市場に向けた投資や供給体制の整備が急務であり、セレンディップの資本支援によって成長加速が期待されます。

3. グローバル展開とシナジー

サーテックカリヤは東南アジアや中南米を中心に海外拠点を持ち、グローバルな供給体制を整えています。セレンディップはこのネットワークを活かしてグループ企業全体の海外展開も強化していく方針です。

4. セレンディップの成長戦略「チャレンジ500」

セレンディップHDは、2027年までに売上500億円を目指す「Serendip Challenge 500」を掲げています。今回の買収は同社にとって過去最大規模であり、売上・収益の両面で非連続成長を狙った戦略的M&Aといえます。

今後の展望

サーテックカリヤは、セレンディップHDの経営支援のもと、技術開発や海外生産体制の強化を図ると見られます。また、セレンディップは表面処理分野という新たな専門技術をグループ内に取り込み、製造業の高度化を加速する構えです。

今回の提携は、単なる買収ではなく「中堅製造業の再成長モデル」として、他の地方企業にも広がっていく可能性があります。EVや次世代車市場の波を見据え、今後の動向に注目が集まります。

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