エンジン車の心臓部ともいえる「燃料供給系」の分野で長年の技術力を培ってきた株式会社ミクニ。
スロットルボディやキャブレターといった内燃機関に不可欠な部品を手がける老舗メーカーでありながら、近年は航空・医療・農業機械分野などへの事業展開も進めています。
EV(電気自動車)への移行が進む中、同社はどのように変革へ対応しているのでしょうか。
本記事では、ミクニの会社概要や製品群、決算状況から将来性、給与や働きやすさに至るまで、転職や就職を検討する方に向けて詳しく解説していきます。
この記事の執筆者(本田)
自動車業界で働いて20年。様々な工場に出入りしてきました。
この20年間で、大企業から零細企業まで仕事を通じて見てきましたが、中には倒産や廃業してしまった会社も残念ながら多くあります。
昨今の自動車業界の大変革により、厳しさが増している業界の情報を発信していますので、自動車業界に従事している方は、ぜひ、お役立てください。
株式会社ミクニの企業分析
会社概要:燃料系統を中心とした独立系部品メーカー
株式会社ミクニは、1923年創業の独立系自動車部品メーカーで、東京都千代田区に本社を構えています。
主に二輪・四輪車向けのキャブレター、スロットルボディ、燃料噴射装置などの燃料供給系部品の製造・販売を行っています。
また、航空宇宙や医療福祉、産業機器、緑地管理などの分野にも事業を展開しており、多角化経営が特徴です。
主な製品と納入先
事業分野 | 主な製品 | 納入先 |
---|---|---|
自動車・二輪車 | スロットルボディ、燃料噴射装置、EGRバルブ | スズキ、ヤマハ、日産、SUBARU、三菱、ホンダ ほか |
産業・生活機器 | ガス制御機器、農業機械用制御機器 | クボタ、ヤンマー、リンナイ、ノーリツ ほか |
航空・医療 | 航空部品、介護福祉機器 | JAXA関連機関、医療・福祉施設 |
決算分析:黒字回復の兆しと財務改善
2023年3月期の業績
項目 | 金額 | 前年比 |
---|---|---|
売上高 | 504億円 | +6.2% |
営業利益 | 20億円 | 黒字転換 |
純利益 | 8億円 | 黒字転換 |
自己資本比率 | 31.2% | 改善傾向 |
倒産リスクの評価
過去には赤字に苦しんだ時期もありましたが、最近は収益改善が進んでいます。
財務体質の健全化も進んでおり、短期的な倒産リスクは「低」と判断されます。ただし、EV化の波に十分に乗れるかどうかが中長期的なリスク要因です。
給与水準と初任給
平均年収と初任給
学歴 | 初任給(月額) |
---|---|
大学卒 | 225,000円 |
大学院卒 | 235,000円 |
平均年収は約520万円(従業員平均年齢約41歳)で、同規模の自動車部品メーカーと比較してやや低めです。賞与は年2回で、業績により変動があります。
昇給・福利厚生
- 昇給:年1回(4月)
- 賞与:年2回(6月・12月)
- 福利厚生:退職金制度、財形貯蓄、借上社宅制度、持株制度など
将来性:EV車時代の影響と転換点
主力製品のリスク
ミクニの主力であるスロットルボディや燃料供給系統の多くは、内燃機関(ICE)向けです。そのため、EV(電気自動車)への急速な転換が進むと、既存の事業モデルに大きな影響が生じる可能性があります。
EV対応の取り組み
EV向けのサーマルマネジメント製品や、パワートレインの小型化に対応する制御バルブの開発などに着手しています。また、介護・医療・農機分野など非自動車分野の拡大によって事業リスクの分散を進めています。
トランプ関税の影響
米国依存とリスク
ミクニは米国への輸出比率は高くありませんが、調達部品に海外製が多いため、関税コスト増加の間接的影響は免れません。特に鉄鋼・アルミ素材の関税強化は製造原価に反映されやすいです。
対応策
仕入先の多様化、調達コストの見直し、生産拠点の最適化などで関税リスクの緩和を進めています。
口コミと評判
社員の声
- 安定志向の社風で、まじめな人が多い。
- 給与は高くないが、ワークライフバランスは比較的良い。
- 昇進は年功序列型でスピード感に欠けるという声も。
- 技術力はあるが、新規開拓への意識は低め。
- 海外勤務のチャンスは限られている。
総合評価
ミクニは老舗ならではの安定感と、燃料系部品における高い技術力を有する企業です。EV化による逆風もありますが、非自動車分野の拡大や新技術開発への取り組みによって、再成長の可能性を秘めています。転職・就職先としては、「安定志向+技術系」の人材に向いた会社といえるでしょう。