自動車業界がやばい

部品メーカー×倒産の可能性

日本発條はなぜ倒産しない?売上7,000億円超えの裏にある安定戦略

日本発條株式会社(通称:ニッパツ)は、自動車用ばねやシート、精密部品などを手掛ける日本を代表する部品メーカーの一つであり、グローバル展開を進めながらも、国内自動車産業との強い結びつきを維持しています。

電動化や米中貿易摩擦、働き方改革など、外部環境の変化にどう対応しているかが今後の焦点です。

この記事の執筆者(本田)

自動車業界で働いて20年。様々な工場に出入りしてきました。

この20年間で、大企業から零細企業まで仕事を通じて見てきましたが、中には倒産や廃業してしまった会社も残念ながら多くあります。

昨今の自動車業界の大変革により、厳しさが増している業界の情報を発信していますので、自動車業界に従事している方は、ぜひ、お役立てください。

 

会社概要

企業情報と主力製品

項目 内容
会社名 日本発條株式会社(Nippon Seiki Co., Ltd.)
設立 1939年9月
本社所在地 神奈川県横浜市金沢区福浦3-10
資本金 170億円
従業員数 連結:20,524人(2024年3月時点)

主な製品と納入先

  • 自動車用シート(乗用車、商用車向け)
  • 懸架ばね(コイルスプリング、スタビライザーなど)
  • 精密ばね(HDD部品、光通信部品など)

納入先にはトヨタ自動車、ホンダ、日産、マツダ、SUBARU、いすゞ、三菱ふそうなど国内OEMが並び、特に日系完成車メーカーとの取引比率が高いです。

決算分析

業績推移

年度 売上高(億円) 経常利益(億円) 自己資本比率
2022年3月期 6,794 316 43.2%
2023年3月期 7,154 401 45.0%
2024年3月期 7,669 478 46.1%

倒産リスクの考察

売上・利益ともに年々安定的に成長しており、自己資本比率も40%以上を維持しています。為替変動や原材料費高騰の影響を受けつつも、経営体質は堅固。短期的な倒産リスクは極めて低いと評価できます。

給与水準

初任給・平均年収

学歴 初任給(月給)
博士了 267,740円
修士了 249,320円
学部卒 230,120円
高専卒 209,470円

平均年収はおよそ600万円前後であり、製造業としては標準以上。福利厚生も整っており、住宅手当や家族手当も支給されます。

将来性(EV化への対応)

EV普及により「懸架ばね」や「シート」の構造が変化しており、軽量化・静音化が重要視されています。

ニッパツでは高張力ばね鋼の新技術や、樹脂複合素材への研究開発投資を拡大中。モーター制御に伴う精密ばね需要の増加もあり、EV時代でも一定の競争力を維持できる見込みです。

トランプ関税の影響

2025年に再発足した米国トランプ政権による対日関税政策が再び注目されています。米国での現地生産比率が高まっているとはいえ、懸架部品の一部は日本からの輸出が残っており、関税引き上げはコスト増要因です。

ただし、米国現地法人での生産体制強化により、回避の動きも進んでいます。

職場環境

定着率と退職者の声

平均勤続年数は男性17年超、女性18年と長期雇用型の傾向が強く、安定性の高い職場といえます。口コミでは「福利厚生は良好」「残業は部署次第」といった声が多い一方、「昇進は年功序列」「女性の管理職が少ない」など古い体質への指摘もあります。

過去に起きたトラブル

品質不正やコンプライアンス違反といった深刻なスキャンダルは公表されていません。ただし、2018年には「ばねの海外品質トラブル(インドネシア子会社)」が発生し、再発防止策を講じています。また、物流費高騰を転嫁できず一部収益圧迫が問題視されました。

口コミ

  • 「住宅手当と家族手当があるので安心して生活できる」
  • 「技術開発力は高く、自動車業界でも通用する」
  • 「中堅~管理職にかけての昇格に時間がかかる」
  • 「女性の働きやすさは今後改善に期待」

全体としては「安定・保守的」な企業風土であり、若手で成長志向の強い人にはやや物足りなさを感じる一方、安定志向・技術志向の人にとっては魅力的な会社といえます。

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