武蔵精密工業株式会社(Musashi Seimitsu Industry Co., Ltd.)は、自動車やバイクの駆動系部品を中心に世界展開するグローバルサプライヤーです。
かつては本田技研工業の有力協力会社として知られ、ギアやデファレンシャル部品の高い加工技術で業界に名を馳せていました。
しかし、EV(電気自動車)化やグローバル競争の激化により、近年では「やばいのでは?」という声も散見されるようになっています。ここでは、同社の財務・製品・人材の側面から多角的に分析します。
この記事の執筆者(本田)
自動車業界で働いて20年。様々な工場に出入りしてきました。
この20年間で、大企業から零細企業まで仕事を通じて見てきましたが、中には倒産や廃業してしまった会社も残念ながら多くあります。
昨今の自動車業界の大変革により、厳しさが増している業界の情報を発信していますので、自動車業界に従事している方は、ぜひ、お役立てください。
会社概要
主な製品
- 差動装置(デファレンシャルギア)
- トランスミッション部品
- カムシャフト・ギア・駆動部品全般
- 二輪車用エンジン部品
- EV向け部品(モータコア、減速機など:開発段階含む)
主要納入先
- 本田技研工業(売上の約50%を占める)
- ヤマハ発動機、スズキ、日産、トヨタなど
- 海外OEM(GM、フォルクスワーゲン、現代など)
決算分析
2024年3月期(連結)
項目 | 金額 | 前年比 |
---|---|---|
売上高 | 2,350億円 | +2.1% |
営業利益 | 72億円 | -9.5% |
経常利益 | 65億円 | -12.8% |
当期純利益 | 22億円 | -38.6% |
自己資本比率 | 41.2% | やや低下 |
倒産の可能性
- 短期的な資金繰りには問題なし
- 中長期では本田技研依存の構造がリスク
- 利益率の低下と海外拠点の赤字化が懸念材料
「やばい」と言われている理由
- ホンダ依存度が極端に高く、販路の多様化が進んでいない
- 主力製品がエンジンやトランスミッション関連でEV時代に逆風
- 海外(特に北米・メキシコ)での固定費増と収益悪化
- M&Aで買収した企業の業績が低迷している
- EV関連製品の商用化が遅れており先行投資の負担が大きい
給与水準
初任給(2024年度)
- 学部卒:月給220,000円
- 修士卒:月給242,000円
平均年収
- 約590万円(製造業平均程度)
- 30代中盤:年収600〜700万円
- 管理職クラス:800〜950万円
将来性(EV車になった時)
- トランスミッション部品や駆動系部品の需要は減少傾向
- モーター用部品・減速機でのEV向け商品開発に注力中
- EV二輪車向け部品では一定の競争力を確保
- ギア加工技術を活かした新規市場(風力・産業機械)への展開が課題
トランプ関税の影響
- アメリカに生産拠点(オハイオ州など)があり、影響は緩和傾向
- ただし鉄鋼・アルミ材料の関税により、原価圧迫の影響を一部受けた
- 米国輸出依存度は高くないが、日米FTAの行方次第で不確定要素あり
職場環境
定着率・離職率
- 新卒3年以内離職率:約18%
- 技術系社員の定着率は比較的安定
- 工場現場や海外駐在に不満の声が多い
退職者の声
- 「工場勤務の負担が重い割に評価されない」
- 「ホンダの顔色を伺う文化が根強い」
- 「グローバル展開が先行しすぎて現場が追いついていない」
過去に起きたトラブル
- 2020年:北米工場での操業停止、COVID-19による需要急減
- 2021年:減損損失を複数の海外拠点で計上
- 2023年:EV関連新規設備投資による財務負担増加
口コミ(良い点・悪い点)
良い口コミ
- 「ギア加工や鍛造技術は業界トップクラス」
- 「本社は新しく快適なオフィス環境」
- 「福利厚生は標準以上」
悪い口コミ
- 「中堅どころの退職が続いており、現場が疲弊している」
- 「EVへの転換が遅れており将来が不透明」
- 「管理職の育成制度が曖昧で上意下達が根強い」
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