イノアックコーポレーション(INOAC)は、ウレタンやゴム・樹脂・複合素材を用いた工業製品を製造する総合素材メーカーです。
日本だけでなく、アジア・北米・欧州にも多数の生産拠点を持ち、自動車業界をはじめとする幅広い産業と関係を持っています。しかし近年、構造的な課題や業績低迷から「やばい」との声も聞かれるようになっています。
本記事では、イノアックの現状と将来性について詳しく解説します。
この記事の執筆者(本田)
自動車業界で働いて20年。様々な工場に出入りしてきました。
この20年間で、大企業から零細企業まで仕事を通じて見てきましたが、中には倒産や廃業してしまった会社も残念ながら多くあります。
昨今の自動車業界の大変革により、厳しさが増している業界の情報を発信していますので、自動車業界に従事している方は、ぜひ、お役立てください。
会社概要
主な製品分野
- ウレタンフォーム製品(座席クッション、シートパッドなど)
- 自動車用内装部品(ダッシュボード、ヘッドライナー)
- ゴム・樹脂製シール材
- 住宅・医療・産業用途向けの多機能フォーム素材
主要納入先
- トヨタ自動車、ホンダ、日産など国内大手自動車メーカー
- 海外OEM(GM、フォード、現代など)
- 住宅設備・家電メーカー(パナソニック、LIXIL 等)
決算分析
最新業績(2023年12月期・非上場のため推定値)
項目 | 金額(推定) | 前年比 |
---|---|---|
売上高 | 3,200億円 | +1.0% |
営業利益 | 60億円 | -10.5% |
経常利益 | 58億円 | -13.0% |
純利益 | 20億円 | -35.0% |
自己資本比率 | 約40% | やや低下 |
倒産の可能性
- 現時点では資金繰りに余裕があり、倒産のリスクは低い
- しかし収益性が低く、固定費の高止まりが課題
- 外部環境の変化(原材料費、為替、EV化)に対応できなければ赤字化の恐れも
「やばい」と言われている理由
- 自動車業界の変化に対応できていない(EV内装では競争力が不明)
- 汎用品が多く、差別化が難しい
- 賃金水準の割に労働環境が厳しいとの声がある
- グローバルでの人員整理や拠点閉鎖が続いている
- 非上場企業で情報開示が少なく、外部評価が難しい
給与水準
初任給(2024年度)
- 学部卒:月給230,000円
- 修士卒:月給250,000円
平均年収
- 約560万円(製造業平均よりやや低め)
- 40代管理職クラスで700~800万円程度
将来性(EV車になった時)
- 従来型の座席用ウレタンやダッシュ部品の需要は維持される可能性あり
- ただし、EV特有の軽量化・新素材競争に出遅れ気味
- サーマルマネジメント材(断熱・放熱部品)への展開が期待されている
- EV向けにどこまで製品群を再構築できるかが鍵
トランプ関税の影響
- 北米にも生産拠点を持つため、対米輸出に依存しすぎてはいない
- ただし米中摩擦の影響で中国工場の製品移転を強いられたケースもあり
- 為替変動や素材輸入コストの増加が収益を圧迫
職場環境
退職率・定着率
- 新卒3年以内の離職率:15〜20%
- 技術・研究職は比較的安定、製造・営業職での離職率が高め
退職者の声
- 「体育会系で古い企業文化が残っている」
- 「海外駐在の負担が大きく、帰任後のポジションが保証されない」
- 「昇進に時間がかかる」
過去に起きたトラブル
- 2020年:北米工場でストライキ、労使交渉が長期化
- 2021年:インド工場で環境法令違反を指摘され操業一時停止
- 2023年:国内拠点で有機溶剤による労災事故が発生
口コミ(良い点・悪い点)
良い口コミ
- 「材料開発に強みがあり、研究職にとってはやりがいがある」
- 「大企業としての安定感はある」
- 「海外勤務のチャンスがある」
悪い口コミ
- 「評価が年功序列で成果が報われにくい」
- 「部門によって雰囲気に差がありすぎる」
- 「非上場なので株式報酬や透明性が乏しい」