エフ・シー・シー株式会社(FCC)は、クラッチを中心とするトランスミッション部品で高いシェアを持つ自動車部品メーカーです。
ホンダ系の主要サプライヤーであり、グローバルに生産拠点を展開していますが、近年はEV化の波や北米市場の停滞により経営リスクもささやかれています。
この記事ではFCCの最新情報と将来展望について深く掘り下げていきます。
この記事の執筆者(本田)
自動車業界で働いて20年。様々な工場に出入りしてきました。
この20年間で、大企業から零細企業まで仕事を通じて見てきましたが、中には倒産や廃業してしまった会社も残念ながら多くあります。
昨今の自動車業界の大変革により、厳しさが増している業界の情報を発信していますので、自動車業界に従事している方は、ぜひ、お役立てください。
- エフ・シー・シーの最新ニュース
- エフ・シー・シー株式会社の会社概要
- 決算分析
- 倒産の可能性
- 「やばい」と言われている理由
- 給与水準
- 将来性(EV車になった時)
- トランプ関税の影響
- 職場環境
- 過去に起きたトラブル
- エフ・シー・シーの口コミ
- 将来的な展望
エフ・シー・シーの最新ニュース
- 2024年12月:北米工場の再編により、米国インディアナ州の一部生産ラインを閉鎖
- 2024年9月:2024年度上半期決算を発表、営業利益が前年同期比▲40%減
- 2024年6月:インド・タイでEV二輪向けクラッチシステムの試作開始を発表
エフ・シー・シー株式会社の会社概要
企業基本情報
会社名 | エフ・シー・シー株式会社(FCC Co., Ltd.) |
---|---|
設立 | 1939年10月 |
本社所在地 | 静岡県浜松市中央区宮竹町600番地 |
資本金 | 4,844百万円(2024年3月末現在) |
従業員数 | 単体:約1,100名/連結:約5,900名 |
上場市場 | 東京証券取引所 プライム市場(証券コード:7296) |
主要事業内容
エフ・シー・シーは自動車・二輪車向けの「クラッチ」専門メーカーとして世界的に知られています。自社開発の湿式・乾式クラッチのほか、AT車用のクラッチプレートやトルクコンバータ用部品なども手掛けており、国内外の大手完成車メーカーに供給しています。
主な製品
- 二輪車用クラッチ(湿式・乾式)
- 四輪車用クラッチ
- AT車用トルクコンバータ部品
- 摩擦材製品
主な納入先
- 本田技研工業(ホンダ)※主要取引先
- ヤマハ発動機
- スズキ
- 川崎重工業
- トヨタ自動車
- 日産自動車
国内外の拠点
FCCは国内に加え、北米・中国・インド・タイ・インドネシア・ベトナム・メキシコなどに製造・開発拠点を展開しており、グローバルに供給体制を構築しています。
経営ビジョン
「世界No.1のクラッチメーカー」を掲げ、二輪車分野での高シェアをさらに強化しつつ、四輪車・電動車分野でも摩擦制御技術を応用した新事業開拓に注力しています。
決算分析
2024年3月期 連結決算
項目 | 金額 | 前年比 |
---|---|---|
売上高 | 1,578億円 | +2.3% |
営業利益 | 78億円 | ▲17.4% |
経常利益 | 76億円 | ▲14.2% |
当期純利益 | 47億円 | ▲11.6% |
自己資本比率 | 72.1% | 健全 |
2024年3月期の連結決算では、売上高が前年比+2.3%と微増となった一方で、各利益項目は2桁の減益となりました。主な要因としては、原材料費やエネルギーコストの上昇、為替影響、ならびに国内外生産調整の影響などが挙げられます。営業利益の落ち込みが▲17.4%と最も大きく、収益性の改善が今後の課題と言えます。
ただし、自己資本比率は72.1%と非常に高く、財務体質は引き続き健全です。倒産リスクは低く、中長期的な成長投資や構造改革を実行できる余力も維持しています。今後の収益回復と事業ポートフォリオの見直しが注目されます。
倒産の可能性
- 赤字ではないが、利益率が年々下がっている
- 主力製品がEV化で不要になる懸念あり
- 自己資本比率は高く、すぐの倒産リスクは低い
「やばい」と言われている理由
- 主力がクラッチ=EV化で消失する領域
- ホンダ依存度が高く、取引リスクが偏っている
- 北米市場での販売不振が続く
- 事業の多角化が遅れているとの指摘
給与水準
初任給(2024年度)
- 学部卒:月給223,000円
- 修士卒:月給245,000円
平均年収
- 約580万円(正社員平均)
将来性(EV車になった時)
- EVはクラッチ不要な構造が主流 → 主力製品が減少
- 二輪EVやHEV用クラッチでは継続的ニーズあり
- EV用新規製品の開発に力を入れているが、実績はこれから
トランプ関税の影響
- 米国生産拠点あり → 直接的な関税影響は限定的
- ただし、ホンダの米国車両生産が停滞すると連鎖影響がある
職場環境
定着率・離職率
- 新卒3年以内の離職率:16〜20%
- 製造現場は比較的安定、総合職に転職傾向あり
退職者の声
- 「古い企業文化で若手が意見しにくい」
- 「ホンダ案件に集中しすぎて先が不安」
- 「新規事業に人と予算が回らない」
過去に起きたトラブル
- 2020年:ホンダ北米車のリコールに巻き込まれ一部返品
- 2018年:国内工場で火災発生、クラッチの生産一時停止
エフ・シー・シーの口コミ
良い口コミ
- 安定した企業体質:「ホンダ系サプライヤーとしての取引基盤が安定しており、長く働ける会社だと感じる」という声が多く見られます。
- ワークライフバランスがとりやすい:「残業は比較的少なく、有給休暇も取得しやすい」「有給取得率が高く、家庭との両立がしやすい」など、働きやすさに関する評価が目立ちます。
- 福利厚生が充実:「持株会、財形貯蓄、住宅手当など、制度が整っている」「社員食堂もあり、昼食には困らない」といった福利厚生面の満足度も高めです。
- 海外経験が積める:「海外赴任のチャンスがあり、グローバルに活躍したい人には向いている」というキャリア志向の社員の声も。
悪い口コミ
- 年功序列的な評価制度:「実力よりも年次が重視される風潮がある」「若手が昇進しにくい」といった声が一部見られます。
- 製品ラインが限定的:「クラッチ関連が主力で、他分野への展開に限界を感じる」「EVシフトに対する不安がある」という将来性への懸念がある意見もあります。
- 保守的な社風:「新しいことに挑戦するというより、現状維持を重視する会社」「意思決定が遅く、上層部が変化を好まない」という指摘も複数見られます。
- 地方勤務が中心:「本社や工場が静岡県に集中しており、都市圏希望の人には不向き」という地理的なマイナス面も指摘されています。
総合的な評価
エフ・シー・シーは、ホンダ系という安定基盤を持ち、福利厚生やワークライフバランスに関しては高評価が多く寄せられています。一方で、評価制度の硬直性や将来性に対する不安を挙げる声もあり、「安定志向の人には向いているが、成長志向・都市勤務志向の人にはやや物足りない」という二面性がある企業といえるでしょう。
将来的な展望
エフ・シー・シー株式会社は、クラッチという従来の主力技術に依存してきたため、EV化による市場構造の変化に苦しむ可能性があります。
とはいえ、ハイブリッド車向けや二輪市場では一定の需要が残り、技術の応用・転換ができれば今後も存続可能性は高い企業です。
今後は「EV時代に生き残る部品メーカー」として、新たな価値創出と製品ラインの再構築が期待されます。