2026年4月、国内外の商用車業界にとって歴史的な出来事が実現しました。長年ライバルとして競ってきた日野自動車と三菱ふそうトラック・バスが、正式に経営統合し、新会社「日野ふそうトラック・バス株式会社(仮称)」が発足しました。
自動車産業の転換期を迎える中、日本の商用車産業を再構築するための大きな一歩として注目を集めています。
この記事の執筆者(本田)
自動車業界で働いて20年。様々な工場に出入りしてきました。
この20年間で、大企業から零細企業まで仕事を通じて見てきましたが、中には倒産や廃業してしまった会社も残念ながら多くあります。
昨今の自動車業界の大変革により、厳しさが増している業界の情報を発信していますので、自動車業界に従事している方は、ぜひ、お役立てください。
- 経営統合の概要
- 日野自動車と三菱ふそうの統合の狙いと背景
- 今後の展望
- 課題と懸念点
- 部品サプライヤーにとっての変化は?
- 影響を受ける主な部品領域
- 今後の部品サプライヤー戦略のポイント
- 統合に対する業界・世間の声
- まとめ:商用車業界の再編が本格化へ
経営統合の概要
統合の正式実施日と新会社の基本情報
項目 | 内容 |
---|---|
統合実施日 | 2026年4月1日 |
新会社名 | 日野ふそうトラック・バス株式会社(仮称) |
持株比率 | トヨタ自動車、ダイムラートラックが均等出資 |
本社所在地 | 東京都(今後の拠点統合により変更の可能性あり) |
ブランド | 「HINO」「FUSO」両ブランドを維持 |
ブランドは維持されつつも、開発・生産・販売・サービスなどの機能は統合・効率化されていきます。
日野自動車と三菱ふそうの統合の狙いと背景
なぜ統合に踏み切ったのか
- EVトラック・FCVの開発負担の共有
- 国内外における競争力の強化
- 日野の不祥事(排出ガス・燃費データ改ざん)後の信頼回復
- 調達・開発・販売網の効率化
国際競争力の強化を目指す
商用車業界は、EV・自動運転・コネクテッドなどの革新が求められています。
特に欧州メーカーや中国勢の成長が著しく、日本メーカーが単独で戦うには限界があるとの判断から、本統合に至りました。
今後の展望
技術面での協業
- 次世代EVトラックの共同開発(2027年〜)
- 自動運転・安全支援システムの標準化
- 統合後初のEV中型トラック発表予定(2026年末)
グローバル市場への展開
統合により、アジアや中東、アフリカ地域での販売体制強化が見込まれています。特にインドネシアやタイなどのASEAN市場でのシェア拡大を目指す動きが活発化しています。
課題と懸念点
統合後の運営における課題
- 企業文化の違い(トヨタ系とダイムラー系)
- 販売店・整備網の統合による混乱
- 国内工場の再編リスク
雇用や地域経済への影響
国内外の生産拠点統廃合の可能性も取り沙汰されており、今後の工場再編によっては一部で雇用や地域経済への影響も懸念されています。労使交渉や地元との調整がカギとなります。
部品サプライヤーにとっての変化は?
合併によって、両社に部品を供給していたサプライヤーには以下のような影響が想定されます。
1. サプライヤー統合・再編の可能性
- 同じ機能の部品でも、両社で異なるサプライヤーを使っていたケースが多い。
- 合併後は「共通化」「統一化」によるコスト削減を狙い、サプライヤー選定の見直しが行われる。
- 採用が継続される企業と、取引終了となる企業が出る可能性が高い。
2. 調達ボリュームの増加による価格競争
- 部品の共通化が進めば、1社あたりの発注量は増加。
- 大口発注となることで、価格交渉力は合併側に有利に。
- サプライヤーには「単価引き下げ要請」が強まる恐れ。
3. 技術開発力が問われる時代に
- 商用車のEV化、自動運転、コネクテッド化が進む中、サプライヤーにも技術力が求められる。
- 今後の新型車両では、共通プラットフォームに対応した部品提供が必要。
- 旧来のメカ部品だけでなく、電装・制御系のサプライヤーが台頭する可能性。
影響を受ける主な部品領域
部品領域 | 影響 |
---|---|
エンジン系 | ディーゼルとEVで今後の方向性が分かれる。共通化の対象になりやすい。 |
ブレーキ・足回り | 部品共通化が進む見込み。メーカーの選定に変動あり。 |
内装・外装 | ブランド統一による仕様変更が起きる可能性あり。 |
電子部品・ソフトウェア | EV化・自動運転化に伴い、従来よりも重要な役割に。新規参入の余地あり。 |
※表の内容は推定を含みます。
今後の部品サプライヤー戦略のポイント
継続取引のカギは「共通化」対応力
新会社では、設計・開発の共通化が加速します。サプライヤー側も、それに即応した製品開発力と生産体制が求められます。
EV・次世代技術への対応力が必須
特にEV駆動ユニットや電装系部品のサプライヤーには、今後の成長余地があります。一方で、従来型ディーゼルエンジン関連の企業は厳しい競争に直面することになるでしょう。
グローバル調達への対応力も問われる
ダイムラーやトヨタの調達方針に従い、グローバル調達が基本となるため、品質・納期・価格の3要素において国際競争力のあるサプライヤーが生き残ると見られます。
統合に対する業界・世間の声
好意的な意見
- 「グローバルで戦える体制になるのは歓迎」
- 「日本の商用車産業が生き残るためには必要だった」
- 「環境技術開発のスピードが上がるはず」
懸念の声
- 「ブランド統一でHINOの独自性が失われるのでは」
- 「販売店の再編がユーザーに不便をもたらす可能性」
- 「地方工場の雇用が不安」
まとめ:商用車業界の再編が本格化へ
今回の経営統合は、単なる事業提携にとどまらず、グローバルな競争環境に適応するための大きな転換点です。
EV・自動運転・物流効率化といった次世代テーマに対し、日本発の商用車メーカーがどこまで世界市場で存在感を示せるか。日野ふそうの動向は、今後も注目を集めることは間違いありません。