自動車業界の急速なEVシフトとグローバル競争の激化により、これまで内燃機関に強みを持っていた部品メーカーの立場が大きく揺らいでいます。
かつてホンダ系の主要サプライヤーとして知られた京浜精密工業(旧ケーヒン)もその一つです。現在はマレリグループの一員として再編の渦中にある同社ですが、その動向は日産をはじめとする国内OEMにも少なからぬ影響を及ぼしています。
本記事では、京浜精密工業の現状や業績、将来性、さらには「やばい」と噂される背景にまで踏み込んで解説していきます。
この記事の執筆者(本田)
自動車業界で働いて20年。様々な工場に出入りしてきました。
この20年間で、大企業から零細企業まで仕事を通じて見てきましたが、中には倒産や廃業してしまった会社も残念ながら多くあります。
昨今の自動車業界の大変革により、厳しさが増している業界の情報を発信していますので、自動車業界に従事している方は、ぜひ、お役立てください。
- 京浜精密工業の最新ニュース(2025年上半期)
- 会社概要と特徴
- 日産自動車との関係性と影響
- 決算分析と倒産リスク
- 「やばい」と言われている理由
- 給与水準
- 将来性(EV車時代を迎えて)
- 職場環境・退職者・定着率
- 過去のトラブル
- 口コミ(良い・悪い)
- 将来的な展望と考察
京浜精密工業の最新ニュース(2025年上半期)
- 2025年3月、マレリグループが中国での事業再編を発表し、京浜精密の製造ラインの一部を海外移転。
- 国内3工場で人員再配置を実施。希望退職を含む調整が続いている。
- 内燃機関向け製品の受注減少を受けて、EV対応部門への社内投資を拡大中。
会社概要と特徴
基本情報
項目 | 内容 |
---|---|
会社名 | 京浜精密工業株式会社(旧ケーヒン) |
設立 | 1956年(旧社名:株式会社ケーヒン) |
本社所在地 | 埼玉県川越市 |
従業員数 | 約3,000人(グループ全体) |
親会社 | マレリ株式会社(旧カルソニックカンセイ) |
京浜精密は、かつてホンダ系部品大手として知られ、キャブレターや燃料供給系に強みを持っていました。
現在はマレリ傘下で、統合ブランドとしてグローバル展開を進めています。
主な製品と納入先
- 燃料噴射装置(インジェクター)
- スロットルボディ、EGRバルブ
- ECU関連部品(制御系)
- 納入先:ホンダ、日産、トヨタ、スズキ、マツダなど
日産自動車との関係性と影響
- カルソニックカンセイとの合併を経て、マレリとして日産への納入も拡大。
- ただし、日産は近年、調達先の多様化を図っており、マレリの受注シェアはやや後退。
- 日産のEV化加速に対して、内燃機関系サプライヤーは取引継続が難しくなりつつある。
決算分析と倒産リスク
年度 | 売上高 | 営業利益 | 最終利益 |
---|---|---|---|
2022年 | 3,800億円 | -120億円 | -180億円 |
2023年 | 3,500億円 | -95億円 | -150億円 |
2024年 | 3,200億円 | -60億円 | -90億円 |
赤字幅は縮小傾向にあるものの、内燃機関中心の事業構造の見直しが急務。経営再建中であり、倒産リスクは「中~やや高水準」と言える。
「やばい」と言われている理由
- 主力の燃料噴射装置がEV化の波で不要に。
- 親会社マレリの経営再建(前身カルソニックが債務超過)による資金制約。
- 希望退職・人員整理の実施で「リストラ感」が強まっている。
給与水準
項目 | 金額(概算) |
---|---|
大卒初任給 | 約22.5万円 |
平均年収 | 約530万円 |
自動車部品業界の中では中位~やや下。親会社の再建中で賞与変動あり。
将来性(EV車時代を迎えて)
- 内燃系から電動部品・パワエレ製品への移行が急務。
- EV用サーマルマネジメント系部品の開発が進行中。
- ソフトウェア制御技術への投資は遅れ気味。
職場環境・退職者・定着率
- 労働環境は比較的整備されていたが、近年は人員整理や異動が増加。
- 定着率は下降傾向(若手の離職が目立つ)。
- 「将来性に不安」「職種変更への不満」が理由に。
退職者の声(匿名掲示板・口コミサイトより)
- 「昔ながらの職人気質な文化。新しい提案は通りづらい」
- 「リストラが始まり、空気がピリついている」
- 「ホンダ時代より福利厚生が弱体化した」
過去のトラブル
- 2019年:海外子会社での財務報告に関するミス(経理不備)
- 2021年:一部製品で出荷不良(検査体制の見直し実施)
口コミ(良い・悪い)
良い口コミ
- 「技術力は確か。特にエンジン制御に強みがある」
- 「部署によっては人間関係が良く、働きやすい」
悪い口コミ
- 「会社の方向性が見えない。将来に不安」
- 「海外出向・異動が突然言い渡されることがある」
将来的な展望と考察
京浜精密工業(ケーヒン)は、燃料系部品で長年築いてきた技術力と顧客基盤を持つ一方、EV化という構造的転換に追いつけるかが鍵です。マレリグループ全体としての再編も続いており、数年以内に事業統合や売却の可能性も視野に入ります。今後は、「電動化部品への転換」と「海外事業の収益化」が生き残りのポイントになるでしょう。