自動車業界がやばい

部品メーカー×倒産の可能性

今仙電機製作所が「やばい」と言われる理由と再生への道

今仙電機製作所は、自動車部品を中心に幅広い分野で技術を展開する老舗メーカーです。

特にパワーシート用モーターやステップ関連部品などに強みを持ち、大手自動車メーカーとの長年にわたる取引実績を有しています。

本記事では、今仙電機製作所の事業内容や製品の特徴、業界内でのポジション、直近の動向や課題についてわかりやすく解説します。

この記事の執筆者(本田)

自動車業界で働いて20年。様々な工場に出入りしてきました。

この20年間で、大企業から零細企業まで仕事を通じて見てきましたが、中には倒産や廃業してしまった会社も残念ながら多くあります。

昨今の自動車業界の大変革により、厳しさが増している業界の情報を発信していますので、自動車業界に従事している方は、ぜひ、お役立てください。

 

今仙電機製作所の最新ニュース

  • 2025年2月、2025年3月期の通期経常利益予想を3億円から5億円へ上方修正。
  • 2025年3月期第3四半期累計(4~12月)の連結経常損益は4億3,100万円の赤字(前年同期は3億2,800万円の黒字)に転落。
  • 2023年6月、希望退職者募集により154名が応募し、特別損失約8億円を計上。

今仙電機製作所の会社概要

基本情報

株式会社今仙電機製作所(いませんでんきせいさくしょ)は、1945年に設立された日本の自動車部品メーカーです。本社は愛知県犬山市に位置しており、主に自動車用電装品、シート関連部品、福祉機器などの製造・販売を行っています。東証スタンダード市場に上場しており、証券コードは7266です。

主な事業内容

  • シート関連部品:パワーシート用アクチュエーター、リクライナー、トラックシート用機構部品など
  • 電装機器:電動ステップ、バックドア用電動部品、各種アクチュエーター
  • 福祉機器:車いす、昇降機、介護補助機器など

国内外の生産拠点

愛知県本社工場をはじめ、国内には複数の製造・開発拠点を保有。海外では中国、アメリカ、タイ、メキシコなどに拠点を展開し、グローバルに供給体制を構築しています。

主な取引先

日産自動車、トヨタ自動車、スズキ、いすゞなど、国内外の大手自動車メーカーに部品を納入しています。特に日産との関係は深く、長期にわたる主要取引先となっています。

特徴と強み

  • 電動化部品への技術対応(EV対応製品)
  • シート分野における高い機構設計力
  • 福祉機器の開発による社会貢献
  • 自社開発から製造まで一貫体制

近年の動向

近年は自動車の電動化・高齢化社会への対応を強化しており、電動アクチュエーターや電動ステップなど新製品の開発に注力。福祉機器分野では高齢者向けのサポート製品の開発にも取り組んでいます。

今仙電機製作所と日産自動車の関係性

主要な納入先の一つとしての日産自動車

今仙電機製作所は、日産自動車に対してシート部品や電装品を中心とした自動車部品を長年にわたって供給しています。特にパワーシート用のアクチュエーターやモーター、電動ステップなど、快適性や利便性を向上させる部品の納入が多く、日産の多くの乗用車・商用車に採用されています。

品質と信頼性の高さによる長期取引

日産はグローバルな品質基準を持つ完成車メーカーであり、その厳格な基準に応えることで今仙電機製作所は取引を継続しています。生産品質の高さ、納期の厳守、トレーサビリティ対応などが信頼を得る要因となっており、サプライヤーとしての地位を維持しています。

電動化対応への共同開発の可能性

近年、日産は電動車(EV)やe-POWERなどの電動化戦略を加速しており、それに伴い今仙電機製作所も電動ステップや電動アクチュエーターなど、電動化を支える部品の開発に注力しています。両社の連携は今後の電動車市場における技術開発にも波及する可能性があります。

生産拠点の最適化とサプライチェーン強化

今仙電機製作所は日産の生産拠点に合わせ、愛知県本社を中心に国内外に複数の工場を展開しています。グローバルな供給体制の構築とジャストインタイム方式への対応により、日産の生産効率化にも貢献しています。

決算分析

2025年3月期(予想)

項目 金額 前年比
売上高 945億円 +1.1%
営業利益 2億5,000万円 2.5倍
経常利益 5億円 +66.7%
当期純利益 20億円 黒字転換

2023年3月期まで4期連続赤字が続いていましたが、2025年3月期は黒字転換を見込んでいます。

「やばい」と言われている理由

  • 4期連続の最終赤字により、財務体質への懸念が高まった。
  • 希望退職者募集により人員削減を実施し、組織再編の必要性が浮き彫りに。
  • 主要取引先の減産や中国・アジア市場の需要低迷が業績に影響。
  • 株価が低迷し、PBRが1.0倍を大きく下回る状況が続いている。

給与水準

初任給(2024年度)

学歴 初任給
大学院卒 月給23万5,000円
大学卒 月給21万5,000円

給与水準は業界平均と同程度であり、特筆すべき点はありません。

将来性(EV車への対応)

  • マツダと共同で電気自動車のインバーター開発会社を設立し、EV分野への参入を強化。
  • 電子ユニットや各種制御システムの開発に注力し、自動車の電子化に対応。
  • 中長期経営計画「Trust&Challenge2029」に基づき、電子事業の拡大を目指している。

トランプ関税の影響

  • 米国の保護主義政策により、北米地域での事業展開に不透明感が漂う。
  • 海外拠点の再構築が課題となっており、グローバル戦略の見直しが求められている。

職場環境

  • 2023年に希望退職者募集を実施し、154名が応募。
  • 退職者の声として、業績不振や将来への不安が挙げられている。
  • 人員削減により、業務負担の増加やモチベーションの低下が懸念される。

退職者の声

  • 「3期連続赤字となり退職者が続出している。当初は様々な業務を任されることが経験になると考えトライしていたが、通常業務のクオリティは下がり続け、予定していた部署の配属も叶わなかった。」

過去に起きたトラブル

  • 半導体不足や原材料高騰、国際物流の混乱により、業績が悪化。
  • 希望退職者募集に伴い、特別損失約8億円を計上。

良い口コミ

人間関係と職場環境の安定感

「人間関係はとても良かった」「上下関係なく相談しやすい」といった声があり、温かく穏やかな社風が評価されています 。

ワークライフバランスと制度面

「休みは取りやすい」「残業削減の動きがある」「部署によっては定時帰宅可能」といった意見が多数あり、プライベート重視派には働きやすい環境のようです 。

育児・女性登用と裁量のある業務

「育児休暇・産休が取りやすく、女性も活躍できる」「若手でも様々な業務に挑戦できる」と評価されています 。

悪い口コミ

残業制限による収入減と評価制度の不透明さ

「残業制限で給料が減った」「給与・賞与が業績連動で不安定」「評価制度が部署間で差があり不公平」といった不満が多く見られます 。

将来性・成長機会への懸念

「業績が芳しくなく将来が不安」「保守的で挑戦が少ない体質」「基幹システムなどの更新が遅れている」といった声が散見されます 。

上司のスタンスや職務の偏り

「評価は上司の好みや事なかれ主義で決まる」「仕事ができる人に業務が集中しやすい」といった声があります 。

口コミの総まとめ

ポジティブ ネガティブ
・人間関係が良く、温かい雰囲気
・ワークライフバランス(休みやすさや制度充実)
・女性活躍、若手裁量に期待できる
・残業制限による収入低下
・給与・評価制度の透明性不足
・保守的で成長機会に乏しい、上司依存の評価体制

今仙電機製作所は、「人間関係・制度」の面では魅力的な一方で、「収入安定性」「挑戦環境」「評価公平性」に不満を抱く声もあります。
自身の価値観に応じて、配属先部門や職種を慎重に確認することをおすすめします。

将来的な展望

今仙電機製作所は、過去の業績不振からの脱却を目指し、電子事業の拡大やEV分野への参入を進めています。中長期経営計画「Trust&Challenge2029」に基づき、シート・電装事業、電子事業、新事業の3本柱での事業展開を目指しています。今後は、収益体質の強化と持続的な成長に向けた取り組みが求められます。

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