自動車業界がやばい

部品メーカー×倒産の可能性

「日野自動車の主要サプライヤー・ソーシンの現状と課題」

株式会社ソーシンは、トレーラー用カプラなどの商用車向け部品を製造する中堅部品メーカーです。

親会社は日野自動車で、グループの中核製造拠点として長年にわたり技術を蓄積してきました。近年はAIやIoTを活用した業務改革を推進する一方、公取委からの指摘や営業赤字といった課題も浮上しています。

本記事では、株式会社ソーシンの最新の動向から業績分析、職場環境、将来性まで多角的に掘り下げて解説します。

この記事の執筆者(本田)

自動車業界で働いて20年。様々な工場に出入りしてきました。

この20年間で、大企業から零細企業まで仕事を通じて見てきましたが、中には倒産や廃業してしまった会社も残念ながら多くあります。

昨今の自動車業界の大変革により、厳しさが増している業界の情報を発信していますので、自動車業界に従事している方は、ぜひ、お役立てください。

ソーシンの最新ニュース

  • 親会社の日野自動車グループ全体を支える中で、AIやIoTを活用した設計・製造・会計プロセスの早期化に取り組み中 。
  • 連結子会社3工場(入間・玉川・古河)体制で、トレーラー・商用車向け部品の生産を継続 。
  • 公取委により「下請企業への価格転嫁を拒否した」として企業名公表対象となった 。

会社概要・特徴(製品・納入先)

  • 資本金:約14.7億円、本社入間、従業員約1,050名、売上364億円(2024年3月期) 。
  • 主要製品:トレーラー用連結器カプラ(国内シェアトップ)、エンジンギヤ、ウォーターポンプ、駆動/シャシ部品など 。
  • 納入先:日野、いすゞ、三菱ふそう、UD、トヨタなど複数商用車OEM 。

ソーシン株式会社と日野自動車の関係性

ソーシンは日野自動車の完全子会社(100%出資)であり、グループ連結の一員です 。

供給製品と技術連携

同社は日野製トラック・バスに対し、以下のような多岐にわたる部品を供給しています:

  • 連結装置(カプラ)
  • エアータンク
  • プロペラシャフト
  • エンジンギア
  • トレーラー用荷台部品など

これらは日野の商用車に不可欠なコンポーネントであり、設計から製造、品質管理まで一貫した体制を築いています 。

組織・人的交流

日野自動車からソーシンへ、技術者や管理職の出向や人事異動が定期的に行われています。2025年1月には中野武彦氏が専務取締役として出向するなど、グループ内の人的連携が強化されています 。

グループ内での役割・連携体制

日野グループの中核企業として、ソーシンはグループ全体の部品供給基盤を支える存在です。設計開発・製造・出荷までを社内で完結し、日野をはじめ、いすゞ自動車、三菱ふそうトラック・バスなど他社への供給拡大にも取り組んでいます 。

今後の展望と連携戦略

近年では、AI・IoT導入による生産革新や、電動化・環境対応型商用車の動向を踏まえ、設計力・製造力の高度化を進めています。日野自動車の中期経営戦略「Challenge2025」における供給体制・技術革新の中核的存在として、今後ますます存在感を高めると見られます 。

決算分析(倒産の可能性)

2024年3月期決算

項目 金額 前年比
売上高 364億円
営業利益 △1.65億円(赤字)
経常利益 0.97億円
当期純利益 0.45億円

営業赤字となったものの経常・当期純利は黒字。公表資産や純資産の水準からして財務健全性は保たれており、倒産リスクは低いです 。

「やばい」と言われている理由

  • 営業赤字転落による収益性の低下。
  • 公取委による下請け価格転嫁問題で企業イメージが悪化。
  • 商用車特化の依存構造で事業ポートフォリオに偏りがある。

給与水準(初任給も)

  • 従業員平均年収:約750万円(正社員中途/平均残業代含む) 。
  • 求人情報では月給175,000~225,000円の幅も確認 。

将来性(EV車になった時)

  • 商用EV普及によるトレーラー・シャシ構成の変化に対応可能な製品開発が鍵。
  • AI・IoT活用など業務効率化で技術力強化中 。
  • 海外展開による部品供給のリスク分散が期待されるが、体制整備が必要。

職場環境(退職者・定着率など)

  • 平均勤続年数約15年、月20時間程度の残業、有給取得13日 。
  • 育児制度整備は進んでおり、男性育休取得率25%・女性100%と家庭との両立可能 。

退職者の声

  • 「成果が目立ちやすく、評価のチャンスはあるが、年功色も残る」 。
  • 「部署間で温度差があるが、やる気次第で評価も得られる」 。

過去に起きたトラブル

  • 2009年:偽装請負問題で埼玉労働局の指摘あり。
  • 2024年:公取委による下請け価格転嫁対応への社名公表あり 。

ソーシン株式会社の口コミ・評判

勤務時間・残業

残業については部署によって大きな差があり、夜勤交替制の現場では「24時間フル稼働」で残業が常態化しています。

  • 「定時は17時30分、夜勤の場合も5時30分に上がりますが配属先によっては3ヶ月定時で帰れず、毎日残業することになります」
  • 「部署にもよるが残業が多いところだと、時間外手当が出るのでしっかり稼げる」
  • 「能力が低い社員ほど残業が発生し給与が高く、能力が高い社員は仕事を早く終わらせる為給与が低い」

休日・休暇制度

休日出勤は少なく、有給や土日休み取得は比較的取りやすいとの声もあり、ワークライフバランス面では一定の支持があります。

  • 「休日出勤はほとんどなく、休みはしっかりとれる。有給も希望通り取得可能だが、部署による」

給与・評価制度

基本給は平均的ですが、残業代や皆勤手当の割合が大きく、残業ありきの給与体系になっています。

  • 「皆勤手当があり、皆勤手当がつくと一万円プラスされます」
  • 「能力が低い社員ほど残業で給与が高く、能力が高い社員は評価が反映されずモチベーション低下」
  • 「組合があるので基礎賃金は毎年アップ。ただ、年功序列の雰囲気も強い」

職場環境・社風

社員同士のコミュニケーションや人間関係には一定の好感がありますが、一方で「官僚組織的」な体質やトップダウン的な雰囲気に戸惑いの声もあります。

  • 「職場内の風通しはいい。若手もベテランもコミュニケーション取れる」
  • 「官僚組織に似ており、親会社の言うことは絶対従う感じ」

定着率・退職傾向

退職しやすいという面では合理的な仕組みと評価されていますが、優秀な社員が残業条件で辞めていくケースも見られます。

  • 「去るものは追わず。簡単に退職できます」
  • 「優秀な社員ほど退職してしまう傾向がある」

総評

ソーシンは「残業ありきの稼げる給与」「取得しやすい休日・有給」「比較的風通しの良い人間関係」といったポジティブな面がある一方、部署による労働負荷の差、官僚的組織風土、実力が評価されにくい制度など、抱える課題も顕在化しています。総じて言えば、安定と稼ぎを求める人には向いていますが、成長意欲やワークライフバランス重視の方は慎重な検討が必要です。

将来的な展望

今後、商用車のEV化が進む中、株式会社ソーシンは現行製品のEV対応強化と、AI・IoTを活用した製造技術・業務体制の高度化が求められます。また、営業赤字の収益改善や公取委問題への対応を含むガバナンス強化も不可欠です。これらが進むことで、日野グループの一翼として商用車部品分野での再評価・飛躍を期待できるポテンシャルがあります。

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