自動車業界がやばい

部品メーカー×倒産の可能性

【めっき業界の再編と未来】自動車部品産業で生き残るには?

自動車業界では「軽量化」「環境規制対応」「意匠性の向上」といった課題が年々重要視される中、それらを支える技術のひとつとして「めっき加工」が注目されています。

ボルトやナットなどの機能部品における防錆対策はもちろん、外装パーツの高級感を演出する装飾めっき、EV車に必要な電気的特性をもつ表面処理など、用途は多岐にわたります。

特に近年では、金属部品だけでなく「樹脂めっき」など新たな技術も加わり、業界の変革が加速しています。

本記事では、自動車部品業界におけるめっき会社のこれまでの歩みから現在の課題、そしてEVシフトを踏まえた将来の方向性までを詳しく解説します。

この記事の執筆者(本田)

自動車業界で働いて20年。様々な工場に出入りしてきました。

この20年間で、大企業から零細企業まで仕事を通じて見てきましたが、中には倒産や廃業してしまった会社も残念ながら多くあります。

昨今の自動車業界の大変革により、厳しさが増している業界の情報を発信していますので、自動車業界に従事している方は、ぜひ、お役立てください。

 

自動車部品業界における「めっき会社」の役割とは?

自動車業界における「めっき会社」とは、自動車部品に防錆性・耐摩耗性・装飾性を与えるために、金属表面にメッキ処理を施す企業のことを指します。ボルトやナットなどのファスナー類、ブレーキ部品、燃料システム、内外装の装飾部品など、さまざまな領域でめっき技術が活用されています。

めっきの主な種類と用途

めっきの種類 主な用途 特徴
亜鉛めっき ボルト・ナット、フレーム部品 防錆性に優れ、コストが低い
ニッケルめっき 装飾部品、排気系 外観の美しさと耐食性
クロムめっき エンブレム、グリル 高い光沢、硬度
無電解ニッケル 精密部品、電子部品 均一な膜厚、複雑形状にも対応
樹脂めっき 内外装パーツ(グリル、モール等) 軽量で複雑形状に対応、意匠性が高い

これまでのめっき業界の歩みと課題

日本のめっき業界は高度経済成長期から一貫して、自動車・家電・建設分野の部品製造と密接に関わってきました。

自動車業界の成長に合わせて、表面処理技術も進化し、微細な品質管理や大量生産対応が可能となりました。

これまでの課題

  • 六価クロム使用に関する環境規制(RoHS、REACH)
  • 人手不足と高齢化により、職人技の継承が困難
  • 排水処理や作業環境の改善コストが高騰

自動車電動化とめっき会社の対応

近年、自動車業界はガソリン車からEV(電気自動車)へと大きな転換期を迎えています。これにより、従来のエンジン周辺部品が減少し、逆にモーター・バッテリー関連の部品が増加しています。

EVシフトによる影響

  • エンジン部品向け亜鉛・クロムめっきの需要が減少
  • 電子部品向けの無電解ニッケルや金めっきの需要が増加
  • 高電圧対応の絶縁・導電性能のある特殊めっきのニーズが拡大

樹脂めっきの重要性と今後の展望

軽量化とデザイン性の両立が求められる現代の自動車設計において、「樹脂めっき」の重要性が増しています。これは、ABSやPC樹脂などのプラスチック素材に金属皮膜を付ける技術で、見た目の高級感と機能性を両立できます。

樹脂めっきの採用が進む背景

  • EV車やハイブリッド車での軽量化ニーズの増加
  • グリルやモールなど外装パーツの装飾性アップ
  • インモールド成形との組み合わせで一体化部品が可能に

今後の課題と技術革新

  • 環境対応(クロムフリー、無電解対応など)の加速
  • 高耐久性・密着性を確保するための前処理技術の高度化
  • 3D成形や透明樹脂へのめっきなど、多様な加工対応

今後の成長分野と技術動向

将来のめっき業界では、以下のような分野・技術へのシフトが求められています。

成長が期待される技術・分野

  • 無電解めっき・マイクロめっき技術の高度化
  • 樹脂上めっき(インモールド成形など)
  • 水素脆化対策、耐電圧性能のあるめっき膜
  • 排水ゼロのクローズドループめっきライン

めっき会社の再編と業界構造の変化

中小のめっき業者が多かった日本の表面処理業界ですが、最近では以下のような再編も進んでいます。

今後の業界構造

  • 大手Tier1サプライヤーとの提携・資本提携が進行
  • 技術開発型の中小企業が生き残り、汎用品処理業者は淘汰傾向
  • 海外生産移転により、国内は高付加価値・少量多品種対応にシフト

まとめ:めっき業界のこれから

自動車業界の構造転換にともない、めっき業界も「素材対応力」と「環境適合性」「高機能性」での競争が激化しています。特にEVや自動運転向け部品では、従来の防錆だけではなく、導電性・軽量化・微細加工対応などが求められ、表面処理の高度化がますます重要になります。

今後も、「素材多様化 × 環境制約 × グローバル生産」という三重苦を乗り越えるため、めっき会社には研究開発型の企業姿勢とサプライチェーン全体との連携が不可欠です。

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