自動車業界がやばい

部品メーカー×倒産の可能性

愛三工業の将来性は?トヨタ系部品製造会社

愛三工業株式会社(Aisan Industry Co., Ltd.)は、1938年に設立された自動車部品メーカーで、本社は愛知県大府市に位置します。

資本金は108億38百万円で、2023年度の連結売上高は3,143億36百万円、従業員数は連結で10,904名、単独で3,185名です。トヨタ自動車の持分法適用関連会社であり、トヨタグループの一員として重要な役割を担っています。

この記事の執筆者(本田)

自動車業界で働いて20年。様々な工場に出入りしてきました。

この20年間で、大企業から零細企業まで仕事を通じて見てきましたが、中には倒産や廃業してしまった会社も残念ながら多くあります。

昨今の自動車業界の大変革により、厳しさが増している業界の情報を発信していますので、自動車業界に従事している方は、ぜひ、お役立てください。

製造している製品

愛三工業は、自動車のパワートレイン関連部品を中心に製造しています。主な製品には以下のようなものがあります:

  • 燃料ポンプモジュール:燃料供給システムの中核を成す部品で、2022年にデンソーの燃料ポンプ事業を取得し、世界シェア約40%を占めています。
  • スロットルボディ:エンジンの吸気量を制御する部品で、燃費や排出ガスの制御に重要な役割を果たします。
  • キャニスタ:燃料蒸発ガスを吸着・再利用する装置で、環境負荷の低減に寄与します。
  • エンジンバルブ:エンジンの吸排気を制御する部品で、エンジン性能に直結します。

基本的にはエンジン部品の製造をしていて、これらの製品はトヨタ自動車をはじめとする多くの自動車メーカーに供給されています。

一時期は業界的にEV車に傾いたので、「愛三工業は大丈夫かな・・」と思ったりしましたが、しばらくはハイブリッド車が続きそうですね。

将来の展望

愛三工業は、「VISION2030」として、以下の2つの事業領域と3つの基盤を掲げています:

モビリティ事業

クリーンで安全・安心なモビリティの実現を目指し、環境技術を活かした低燃費・軽量化・排ガスのクリーン化・電動化などに取り組んでいます。

未来社会事業

モビリティの枠にとらわれず、街づくりや水素技術の活用など、暮らしやすい豊かな社会づくりを目指した新たなチャレンジを行っています。

3つの基盤

  • デジタル革新(DX):デジタル技術を活用した業務効率化や新製品開発。
  • 人材育成:世界で活躍できる人材の育成に注力。
  • グローバル展開:海外拠点の拡充と現地ニーズへの対応。

トランプ関税の影響

アメリカのトランプ政権による輸入自動車への追加関税(25%)は、日本の自動車部品メーカーにとって大きな影響を与えました。

愛三工業も、アメリカ市場での需要減少やコスト増加の懸念から、グループ会社全体として打撃を受けたと報じられています。

トヨタ自動車との関係

愛三工業は、トヨタ自動車の持分法適用関連会社であり、トヨタグループの一員として密接な関係を築いています。トヨタ自動車からは、品質や納期、コスト面での貢献が評価され、「グローバル貢献賞」など複数の表彰を受けています。

決算分析

2025年4月24日に発表された決算によると、2025年3月期の連結経常利益は前期比12.2%増の192億円となりましたが、2026年3月期は前期比6.7%減の180億円を見込んでいます。

また、年間配当は前期比7円増の75円に増配する方針です。直近の1-3月期(第4四半期)の連結経常利益は前年同期比76.7%増の21.9億円となり、売上営業利益率は前年同期の1.0%から2.1%に改善しました。

愛三工業が「やばい」と言われる理由

近年SNSや一部メディア、業界関係者の間で「やばいのではないか」との声が散見されるようになってきました。その背景には、自動車業界の構造変化、事業リスク、成長鈍化といった複合的な要因が存在します。

燃料系部品の需要減少

愛三工業の主力製品は燃料ポンプやインジェクターといった内燃機関車両向けの部品です。しかし、世界的にEV(電気自動車)への移行が加速する中で、これらの製品は徐々に市場から姿を消しつつあります。

構造変化に乗り遅れた印象

他の部品メーカーがEV向けインバーターや電動駆動ユニットへの参入を進めている中、愛三工業は依然としてエンジン系統への依存が高く、事業構造の転換が急務となっています。

売上・利益ともに鈍化傾向

年度 売上高 営業利益 純利益
2019年3月期 2,154億円 112億円 73億円
2023年3月期 2,011億円 44億円 20億円

近年は売上が横ばい、利益は大きく減少しており、財務体質の悪化が懸念されています。

株価も低迷

投資家の間では「成長ストーリーが見えない」とされ、株価は長期的に冴えない推移を続けています。

売上の大部分をトヨタ向けに依存

愛三工業の売上の約7割以上がトヨタグループ向けであり、トヨタの生産計画や調達方針の変更がそのまま業績に跳ね返ってきます。

下請け構造からの脱却が困難

自社ブランドや独自製品での収益確保が難しく、価格決定権を持ちにくい下請け体質が続いています。

中国・東南アジアでの現地企業との競争

中国などの成長市場では、現地部品メーカーとの価格競争が激化しており、利益確保が難しくなっています。

為替や地政学リスクも影響

円安が短期的には追い風でも、原材料費や海外子会社の安定経営に課題を残しています。

EV・水素対応製品の事業化が進まず

愛三工業も水素燃料電池車(FCV)やEV関連部品への参入を試みていますが、明確な事業化実績は少なく、将来的な収益源としての期待は限定的です。

成長投資に消極的な姿勢

M&Aやベンチャー投資など、変革を促す大胆な戦略が乏しいとの指摘もあります。

口コミ情報

愛三工業の社員や元社員からの口コミによると、以下のような点が挙げられています:

  • 給与・賞与:賞与は年間で約6ヶ月分支給され、昇給も毎年1万5,000円以上と高水準。
  • 労働環境:残業代は全額支給され、サービス残業は基本的にない。年休も取りやすい環境。
  • 福利厚生:トヨタ系列と同等の福利厚生が整っており、社員旅行や部活動、社内食堂なども充実。
  • 人間関係:先輩・後輩間の人間関係が良好で、働きやすい職場環境。

一方で、経営陣の手腕やイノベーションへの挑戦に対する評価はやや低めであり、今後の改善が期待されています。

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