世界トップクラスの自動車メーカーであるトヨタ自動車。
その高品質な製品や安定した生産体制を支えているのが、全国各地に広がる数多くのトヨタグループ系サプライヤーの存在です。 これらの企業は、エンジンや足回り、電装部品、内外装など多岐にわたる分野で高い技術力を発揮し、トヨタのグローバル展開に不可欠な役割を担っています。
本記事では、トヨタ自動車系の主要サプライヤーについて、企業概要や納入部品、業界内での位置づけなどを詳しく解説します。 また、今後の自動車業界の電動化やグローバル化の波における各社の動向や、サプライヤー間の競争環境についても深掘りしていきます。
この記事の執筆者(本田)
自動車業界で働いて20年。様々な工場に出入りしてきました。
この20年間で、大企業から零細企業まで仕事を通じて見てきましたが、中には倒産や廃業してしまった会社も残念ながら多くあります。
昨今の自動車業界の大変革により、厳しさが増している業界の情報を発信していますので、自動車業界に従事している方は、ぜひ、お役立てください。
トヨタ自動車の部品サプライヤー構造とは?
トヨタ自動車は世界最大級の自動車メーカーとして、非常に広範かつ組織的な部品サプライチェーンを築いています。部品調達の特徴は、「系列」と呼ばれるグループ企業を中心にした多段階のピラミッド型構造です。
サプライヤーの総数について
トヨタ自動車の部品サプライヤーは非常に多岐にわたり、以下のような規模感があります:
- 1次サプライヤー:約400社
- 2次・3次サプライヤーを含めた全体:約30,000社以上(国内外)
これは自動車1台あたり3万点以上の部品を必要とすること、そしてトヨタが「現地調達・現地生産」を重視していることが背景にあります。
1次サプライヤー(ティア1)
トヨタに直接部品を納品する企業で、設計段階から開発に関与することもあります。多くはトヨタグループの中核企業です。
会社名 | 主な製品・特徴 |
---|---|
アイシン | トランスミッション、ブレーキ、シャーシ部品などの主要供給企業。トヨタグループ中核。 |
デンソー | カーエアコン、センサー、ECUなどの電装部品大手。トヨタグループ最大の部品メーカー。 |
豊田自動織機 | HV用モーター、カーエアコン用コンプレッサーなどを供給。トヨタ発祥の企業。 |
ジェイテクト | ステアリングシステムやベアリングを供給。旧トヨタ工機と光洋精工が合併。 |
トヨタ紡織 | シート、内装部品などを供給するインテリア専門メーカー。 |
2次サプライヤー(ティア2)
1次サプライヤーに対して部品や素材、加工部品を納入する企業です。技術力のある中堅メーカーが多く、トヨタとの直接取引は行いませんが品質基準は同等に厳しいです。
- エフテック:サスペンション・アーム等のプレス部品をジェイテクトやアイシン向けに供給
- ナブテスコ:ブレーキ制御部品をトヨタ車両向けに提供(主にデンソー経由)
- 太平洋工業:タイヤバルブ、ゴム製品をトヨタ紡織やアイシン向けに納品
- アツミテック:シフトレバー機構をアイシン向けに納入
- オーエスジー:切削工具やタップなどの精密部品を間接的に提供
3次サプライヤー(ティア3:孫請け)
加工部品や素材、工具などを2次サプライヤーに供給する中小企業。知名度は高くありませんが、地元のものづくりを支える重要な存在です。
- 株式会社ミヤマ:焼結金属部品の製造・供給。主にエフテックや太平洋工業向け
- 旭工業株式会社(愛知県):プレス用金型・部品製造。地元密着型で多くの2次企業と取引
- サンエイ工業:ゴム成型加工。太平洋工業やトヨタ紡織の協力工場として機能
- 東陽精工:ベアリング部品の切削加工など。ジェイテクト傘下の小規模精密企業と取引
トヨタの「サプライチェーンの深さ」がもたらす強み
このようにトヨタのサプライチェーンは、ティア1からティア3までの多段階にわたり構成され、長年の信頼関係と品質改善活動(カイゼン)が根付いています。
トヨタ式品質管理とは?
トヨタ自動車は、世界中の製造業に大きな影響を与えた「トヨタ生産方式(TPS)」を生み出した企業として知られています。その根幹を支えているのが、徹底した「品質管理」の思想です。 トヨタ式品質管理は、単なる検査だけでなく、製造工程全体に品質を織り込む考え方で、製品の不具合を未然に防ぐ仕組みが特徴です。
トヨタ式品質管理の基本思想
- 品質は工程で作りこむ(造りこみ品質)
- 問題が起きたらすぐに止める(自働化)
- 標準作業の徹底(ばらつきをなくす)
- 継続的改善(カイゼン)
これらの思想は、「ヒューマンエラーの排除」や「現場での判断力向上」にもつながり、トヨタの高品質な車づくりを実現する要因となっています。
品質管理の具体的手法
トヨタでは、以下のような管理手法が現場で日常的に活用されています。
- 5ゲン主義(現地・現物・現実・原則・厳守)
- QCサークルによる小集団活動
- なぜなぜ分析による原因追究
- 標準化と見える化によるミスの予防
サプライヤーにも求められる品質管理
トヨタは自社だけでなく、サプライヤーにも同様の品質基準を求めています。 そのため、トヨタ系の部品メーカーや加工業者も、厳格な品質監査や改善活動を実施しており、トヨタ式品質管理はサプライチェーン全体に浸透しています。
トヨタ式が世界に与えた影響
この品質管理思想は、世界中の製造業に波及し、トヨタ方式をモデルにした生産・品質システムが各国で採用されるようになりました。 特にアメリカの「リーン生産方式」や欧州の「TQM(Total Quality Management)」にも多大な影響を与えたとされています。
まとめ
トヨタ自動車の部品調達は、1次・2次・3次と多段階で構成されたサプライヤーネットワークに支えられています。全体では30,000社以上に及び、表には出にくい孫請け企業も含めて、「見えないものづくりの底力」が日本の自動車産業を支えていると言えるでしょう。